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エフェクチュエーションの5原則とは?意味・事例・実践方法を徹底解説

ビジネスにおいて、将来を見越していく目が重要だとはよくいわれる言葉です。ところが、AI技術の急激な進化や新型コロナウィルスで経験したようなパンデミック、未曽有の地震・台風などの災害など現代は未来の予測が難しい時代に突入したといえるでしょう。そのため数年先を見通すことさえ難しく、従来同様の意思決定プロセスが通用しないと感じる経営者も多いのではないでしょうか。

そこで注目を集める経営者の意思決定の原理が、「エフェクチュエーション」です。エフェクチュエーションの5原則とは何か、意味や事例・実践方法などを解説していきましょう。

エフェクチュエーションとは?

日本ではまだなじみのないエフェクチュエーションですが、どのような意味なのか、なぜ注目されているのか解説していきましょう。

「エフェクチュエーション」の意味とは?

インド人経営学者のサラス・サラスバシー氏が自身の著書で体系化した、意思を決定する際の理論がエフェクチュエーションです。サラス・サラスバシー氏は、カーネギーメロン大学教授であり、ノーベル経済学賞を受賞したハーバード・サイモンが晩年弟子とした人物です。サラス・サラスパシーは、「エフェクチュエーション:市場創造の実効理論」という著書を2008年に発刊しました。日本でも2015年に訳書が刊行されたことで経営者・起業家たちの間で注目を集めたので、聞いたことのある人もいるのではないでしょうか。

エフェクチュエーションは、「実効理論」と定義されます。前述のサラス・サラスバシー氏は著書の中で、市場について「発見されるもの」ではなく、「つむぎ出される(Fabricated)もの」だと定義しています。従来までの目的から未来を逆算するコーゼーション(因果推測)という考え方と対比するのが、エフェクチュエーションなのです。未来は予測が可能だという考えがエフェクチュエーションのため、コーゼーションの対比として「Course and Effect」から発想を得た言葉「エフェクチュエーション」が誕生しました。

未来は予測不可能であり、目標が不明瞭で人々の活動が環境を駆動する際、経験豊かな起業家がどのように意思決定をするのかをサラスバシー氏はまとめました。そしてエフェクチュエーションの「論理」と「プロセス」、「5つの原理」を体系化して著書にまとめたのです。優れた経営者の実に約89%がエフェクチュエーションを実践していたというから、驚きではないでしょうか。

なぜ現在注目されているのか?

今なぜこのエフェクチュエーションが脚光を浴びているのでしょうか。それは、「VUCA(ブーカ)」の時代と呼ばれる時代に突入したからでしょう。VUCAとは、「Volatility(変動性)」・「Uncertainty(不確実性)」・「Complexity(複雑性)」・「Ambiguity(曖昧性)」の頭文字を取った造語です。将来の予測が難しく、先行きの不透明な状況を意味する言葉です。まさに現代はこのVUCAの時代であり、従来通りのセオリーは通用しないケースも多々あることでしょう。そこでエフェクチュエーションが脚光を浴びているのです。

「コーゼーション」との違いは?

設定した目標から逆算して何をすべきか考えるコーゼーションに対し、何ができるかに重点を置くエフェクチュエーションは真逆のアプローチ法だといえるでしょう。この違いを、料理を例に説明してみます。

夕食にカレーライスを作ろうという目標を決めたら、それに必要な食材を買いに行って料理を作るのがコーゼーションです。一方で、家にある材料を使ってオリジナルカレーを作ろうと取り掛かるのがエフェクチュエーションなのです。コーゼーションの考え方の場合には、買い物に行った先で玉ねぎが売り切れていたり、肉が予算をオーバーしていたりすることもあるでしょう。

その場合にはカレーライスを作るという目標を修正して、別のメニューを考えなければなりません。一方エフェクチュエーションの考えの場合、先に目標を立てずに今もっているリソースから何ができるか考えるため、結果をデザインしていけるのです。不透明で予測困難な時代には、エフェクチュエーションの方が注目される理由がわかるでしょう。

エフェクチュエーション実践に当たっての準備とは?

コーゼーションが「何をすべきか」から考える方法なのに対し、「何ができるか」という視点をもつ方法がエフェクチュエーションであり、不確かで予測困難な現代に適した考え方だとお話ししてきました。エフェクチュエーションの実践の仕方についてお話ししていく前に、実践に当たって必要な準備について紹介していきましょう。それは、自分のもっている「3つの資源」について洗い出すことです。3つの資源とは、次のようなものを指します。

自分が何者なのか?

自分自身の特性や能力、属性などを書き出すなどして洗い出しましょう。特性や能力、魅力や強みなど、自分自身の個性を構成する要素について明確にすれば、それが資源となるのです。つまり自分が何者なのか分析し書き出していくことで、最終的には「自分のもつ資源で何を生み出せるか」が見えてくるでしょう。

何を知っているのか?

自分自身のもつ知識や経験、専門性を把握します。具体的には、これまで受けた教育や経験してきた仕事内容を想起すると、書き出しやすいでしょう。これまでのキャリアや人生経験は人によって料や内容に差があるため、人それぞれスタート地点やゴールが異なるはずです。

誰を知っているのか?

家族や友人、直接的な友人・間接的な友人など社会的・人的なネットワークを書き出します。これはいわゆる「人脈」です。これらの人々自身はもちろん、これらの人々のもつ資源さえも、自分の資源に加えていけるでしょう。

エフェクチュエーションの5原則とは?

ここからは、エフェクチュエーションを実行していく際の5原則を1つずつ解説していきます。

「手中の鳥(Bird in Hand)」の原則

「Bird in the hand is worth two in the bush」という、ことわざをご存知でしょうか。訳すと「手中にある鳥一羽は藪の中にいる鳥二羽分の価値がある」、つまり大きいものの不確実な将来の利益より、小さいものの確実な現在確実に得られる利益の方に価値があるという意味です。日本のことわざでは「明日の百より今日の五十」に近いでしょう。優れた起業家ほど、ビジネスチャンスを生み出す際には、新たな方法を発見するよりももともともっている自分の手持ちの手段(能力や専門性、人脈など)でチャンスを創出しています。

手中にあるものの見定め方としては、前の章で解説した「3つの資源」を洗い出すプロセスが使えるでしょう。

「許容可能な損失(Affordable Loss)」の原則

「手中の鳥の原理」で自分自身の3つの資源を整理したら、走り出す前にどこまでの損失を許容できるかを事前に設定します。つまり、将来的に期待できる利益ベースに考えてしまいがちではあるものの、そうではなくあらかじめ決めた損失の許容範囲を上回らないようにするというわけです。

たとえば自己資金50万円を投じて、趣味のハンドメイドで店を出そうと考える人がいたとしましょう。家賃が10万円の店舗を2年間契約で借りて、今まで勤めていた会社も辞めてしまったとします。この場合将来的な利益を当てにしているものの、利益を上げられなければ事業が失敗してしまうだけでなく、借金と失業、そして心の傷が残ってしまうでしょう。

このケースにエフェクチュエーションを当てはめてみると、まずは知り合いの店の一角にハンドメイド品を置かせてもらったり、SNSでネット販売を始めたりすることが考えられます。そのように自分のもつ資源を有効活用し許容できる損失の範囲内でスタートすれば、顧客の生のニーズを知れたり、顧客対応を経験したりと、経営についてのスキルを身に付けていけるのです。

この例のようにあらかじめ損失の許容範囲を設定すれば、いきなり多額の投資をしてしまうこともなく、少額の投資から始めてトライアンドエラーの繰り返しで次のプロセスに進んでいけるでしょう。このように、許容可能な損失の原則によって、リスクを最小限にコントロールできるはずです。

「クレイジーキルト(Crazy-Quilt)」の原則

形や大きさ、色・柄の異なる布を組み合わせて1枚の布にしたものを、「クレイジーキルト」と呼ぶのはご存知でしょうか。経営においての繋がりや関係性のある関与者と交渉しつつ、パートナーシップを作り上げていくことです。そして、皆が一体となりゴールを目指していくのです。経営するに当たっての関与者といえば、顧客や従業員、協力会社が考えられるのではないでしょうか。ところが優れた経営者は、この関与者に競合他社も含むというから驚きです。優れた経営者ほど、競合他社さえも交渉を重ね、パートナーシップを作り上げていけるのです。

「レモネード(Lemonade)」の原則

「When life gives you lemons, make Lemonade.」という英語のことわざはご存知でしょうか。「人生においてレモン(試練・逆境)がもたらされたら、レモネードを作れ」という意味のことわざです。逆境や不運を前向きにチャンスととらえることでチャンスに変えられるという意味であり、優れた経営者の発想の大きな特徴だといえるでしょう。レモン自体の本来の価値は、よいものでなければ悪いものでもありません。酸っぱくて食べられない、どうにも活用できないととらえるか、母親に渡すことでジャムにしてもらえるとひらめくかは、受け手次第でしょう。

うまくいかないこと・価値のないものも、アイディアや工夫次第ではよいものに生まれ変わらせられるのです。つまりビジネスにおいては、失敗した場面でもそれをチャンスとしていかに成功へつなげるかを重視していく姿勢が大切なのです。

「飛行機の中のパイロット(Pilot-in-the-Plane)」の原則

5つ目の原則は、これまでの4つの原則を網羅した内容です。飛行機を操縦するパイロットは、さまざまな計器類の値を常に確認しつつ、刻一刻と変化する状況に対応しています。不測の事態が起きた際にも、臨機応変に対応するでしょう。たとえ高性能の自動運転装置が搭載されていたとしても、機内でのアクシデントや天候の急変、機材トラブルなどの不測の事態に対応できるように、やはりパイロットの存在は必要不可欠です。

これをビジネスに当てはめると、コーゼーションは自動運転システム、エフェクチュエーションはパイロットにたとえられるでしょう。前もってコーゼーションによって情報収集・分析するのは重要であるものの、実際飛び立てば、不測の事態に次々対応して飛行機を操縦する、エフェクチュエーションも必須となるのです。

エフェクチュエーション実践のためのトレーニング法とは?

エフェクチュエーションは優れた経営者なら自然に行っている原理かも知れません。ただしこの原理を活用しながら経営に生かしたいと考えるなら、「実践・活動・行動」が大切でしょう。そこでここからは、エフェクチュエーション実践のためにどのようなトレーニングをすればいいのか紹介していきます。

まず撃ってから狙い、もう一度撃つ

自分のひらめいたアイディアが、予測可能な過去の延長戦上にはないのなら、考える前にまず実行に移してみましょう。具体的には、アイディアをまずは人に話す、小規模でやってみる、そして考えるのはその後でという流れです。現実社会では、小さく撃っても(アクションしても)必ずリアクションやフィードバックのあるものでしょう。それをもとにして次の行動について調整を繰り返せば、精度が高まっていくのです。

「巻き込み力(アスキング)」を磨き続ける

「アスキング」とは、幅広い意味での「交渉」を指します。交渉というと駆け引きの意味が強いかも知れませんが、経営における交渉(アスキング)とは、何かを教わる、打診する・依頼するといった「巻き込み力」に近いといえるでしょう。

ただし相手がどのような反応をするかは、いつでも予測不可能です。そのような相手に何度もアスキングを繰り返していけば、相手から自分の求めるような協力を引き出すスキルが身について行くことでしょう。

事業のアイデンティティを可視化し共有する

エフェクチュエーションにおいて、アスキングとセットで重要となるのが、経営者個人といての「アイデンティティ」です。アスキングによって周囲を巻き込み、クレイジーキルトを拡張させるとともに、「何を目指していくのか」という経営者としてのアイデンティティを確立させていくのが重要です。このアイデンティティが明確になることで、どの方向へ誰を巻き込みながらクレイジーキルトを拡張させるかという方向性が決まっていくでしょう。

エフェクチュエーションの実例を紹介

最後に、エフェクチュエーションの実例について紹介しましょう。スウェーデンにある炭鉱会社に勤めていたベリークヴィスト氏は、ある日観光客にラフティングをさせてほしいと頼まれたことから、毎週末観光客向けのラフティングのアクティビティを開催する、副業を始めました。このビジネスが軌道に乗ると、鉱山会社を辞して観光シーズの観光客向けにラフティングを提供できるようにビジネスを拡大したのです。

その後オフシーズンの観光はないか考えたベリークヴィスト氏は、札幌の雪まつりを訪れました。そこで旭川市の氷彫刻科と意気投合し、スウェーデンで氷彫刻のイベントを企画したのです。このイベントは話題を呼び、屋内外から多くの観光客や芸術家、メディアが集まりました。

ところがイベント当日、普段降るはずのない雨が降り、氷の彫刻は解けてしまったというのです。もし皆さんがイベント主宰者だとしたら、どのように対応したでしょうか。ベリークヴィスト氏は、氷の彫刻が解けないよう人工的な覆いをする選択はしませんでした。

あえて、氷の彫刻が雨に打たれて解けていく様子を見守ったのです。これはアウトドア好きのベリークヴィスク氏ならではの、自然そのものを楽しむ価値観がそうさせたのでしょう。そして、彼に賛同した参加者たちによって、巨大な氷を使うワークショップが始まったのです。ある1つのグループが、氷のブロックを使った建物を作り、一晩泊ることを提案しました。これが、現在ではスウェーデンを代表する観光アクティビティの1つ、アイスホテル誕生の瞬間です。

この出来事を、エフェクチュエーションに当てはめてみましょう。まずベリークヴィクス氏は自分のもつアウトドアの知識を生かし、休日だけという損失の出ない範囲で企業しました。これが「手中の鳥の原則」と「許容可能な損失の原則」に当てはまります。次に、芸術家や観光関係者、メディアや観光客を巻き込んで、氷の彫刻イベントを開催したのは「クレイジーキルトの原則」でしょう。

さらに、突然の雨という「レモン」から、アイスホテルというレモネードを誕生させた「レモネードの原則」が実現しました。既成概念に縛られず、その時にあったものと自分のもつ手段を組み合わせ、現状をコントロールし続けたことで、アイスホテル開業という未来を方向付けた「パイロットの原則」も実現させられたのでしょう。

まとめ

先行きの不透明で予測不可能な現代だからこそ、臨機応変に判断しつつゴールを創出していくエフェクチュエーションが有効です。経営者によっては、エフェクチュエーションの5原則のどれかはすでに身についているかも知れません。これからの時代を切り開く経営戦略として、ぜひエフェクチュエーションを実践してみましょう。

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