突然ですが、「DAO」という言葉を聞いたことはありますか?
最近、徐々に仮想通貨関連の用語の中で「DAO」という言葉を聞くようになったと感じた人もいるかもしれません。しかし、まだまだDAOの意味は世間的に浸透してきていません。
今回は、DAOの概念や、これから私たちは、どのようなネットワークの元で生活を送ることになるのかについて紹介します!
DAOの特徴とは?
DAOとは、日本語では「分散型自律組織」と訳されており、ブロックチェーン上で築かれ、運営される組織を指す言葉です。そしてこれは次世代での組織や、働き方の新しいあり方を示すものであり、これからの時代に必要な概念です。
まず、DAOとはどのような形態の組織をいうのかについて、紹介します。
DAOは中央管理形態ではない組織
DAOはよく株式会社と比較して考えられます。株式会社は、上層部を筆頭とするピラミッド構造となっています。その上層部の意思決定により、トップダウン方式で経営方針や業務内容が指示されていきます。
それに対してDAOは組織をまとめ上げる人が存在せず、参加者が皆対等な立場であり、参加者の話し合いや投票によって意思決定がなされます。その時に使用されるのが「ガバナンストークン」と呼ばれる、独自の仮想通貨です。そのように、DAOとは、「民主的」に集められ、運営されていく組織なのです。
意思決定をはじめ、利益配分、資金調達などが、「スマートコントラクト」という、「ブロックチェーン上で契約や処理を自動的・瞬時に行うプロトコル」によって行われます。
透明性が高く、誰でも閲覧できる
DAOはブロックチェーン上で運営されているため、参加者の間で決定された事項が、スマートコントラクトで実行されます。また、ブロックチェーンはオープンソースであり、そのスマートコントラクトの内容を誰でも見ることができます。
誰でも組織に入ることができる
株式会社の場合は、そこに入社するときも辞める時も、雇用主との契約関係の手続きを行います。一方DAOは、インターネットに接続できる環境があるだけで、誰でも短時間で参加・脱退ができます。また、ガバナンストークンを所持している人は、その組織の意思決定に関わる事ができます。
ネット上で見られるDAOの例
DAOはブロックチェーン上で集められる、参加型の組織であり、その意思決定は仮想通貨を用いて民主的に決定されるという特徴があります。それでは現在、DAOと呼ばれる組織には、どのようなものがあるのでしょうか?
MakerDAO
MakerDAOはイーサリアムのブロックチェーンを活用している、DeFiプロジェクトです。MakerDAOは、2014年に正式リリースされました。DeFiプラットフォームとしては、このジャンルの中では、比較的長い歴史をもちます。長い歴史だけでなく、実際にさまざまなDeFiプロジェクトの中でも2022年のTVL(Total Value Locked=プロジェクト内に預け入れられている、仮想通貨の価値の合計)ランキングで1位の実績があります。
MakerDAOでは DAIという、ドルのステーブルコイン(実際に、世界で使用されている通貨と、価値が連動する仮想通貨)を発行できます。ここでのガバナンストークンはMKRと呼ばれるものです。
PleasrDAO
PleasrDAOは、投資家が互いに資金を出し合い、NFTを集めていることで有名なDAOです。NFTを担保として、DeFiプロトコル「C.R.E.A.M. Finance」の機能である、プロトコル間ローンの「Iron Bank」から、暗号資産を借りることに成功したことで、有名になりました。しかもその時の額は350万ドルと、とても大きな額でした。以前からDeFiでも融資を受けることは可能でしたが、NFTを担保として借り入れを行ったDAOは世界で過去に例はなく、これが初めてでした。
このような事例は、たとえばNFTが、アーティスト・クリエイターへのオーナーシップをもった経済圏を作るきっかけとなりました。NFTを担保として得られた資金によって、ブロックチェーン上で生み出されたアートは、所有できるデジタルアートとして、NFTアートの収集の対象とされます。それを繰り返し、さらに次のNFTアートを生み出していく事が可能となるはずです。
ビットコイン・イーサリアム
ビットコインは、2008年にインターネット上で「サトシ ナカモト」と名乗る人が、「国家や銀行を介しない、分散管理型の暗号資産」についての論文として、投稿したのがきっかけでした。その後、2010年には初のビットコインの取引所が開設されて、取引が始められました。
一方イーサリアムは、プラットフォームで、アプリケーションを開発するために利用されています。そこで開発されたアプリは「DApps(ダップス)」と呼ばれ、金融や不動産、ゲームなど、さまざまなジャンルで開発が進められています。
数ある暗号資産の規模については1位がビットコイン(BTC)、2位がイーサリアム(ETH)となっています。
そもそもビットコインやイーサリアムも、ブロックチェーン上で運営されているのでDAOであるといえます。ビットコインやイーサリアムでは、法定通貨を使っていないため、中央銀行などでいうところの「代表者」はいません。
ここでの取引履歴は、ブロックチェーン上で記録され管理されており、これがいわゆる「取引台帳」の役割を果たしています。そしてこのシステムは従来のサーバーによる管理と比べ、全てのクライアントが共有できる点、複数の場所でデータを保有していること点で、データの改ざんに強く、一部の端末の停止が起こっても、システム全体のダウンが起こらないという長所があるため、優れた方法と認められています。現在も取引の記録方法として、その技術が広く使用されています。
和組DAO
これまで紹介してきたものは、海外のDAOでしたが、日本発のDAOも存在します。そのひとつが「和組DAO」です。これは、Webに関しての最新情報を参加者が互いにシェアし、意見を交換するコミュニティです。その主な話題は次世代のインターネット形式である Web3全般(DeFi・DAO・ Crypto・ NFT・ Blockchain・ Metaverseなど)についてです。
初心者でも入ることができ、Web3.0の最先端の情報を学習できる「イベント」も開催されています。発言も自由ですので、気兼ねなく参加できます。「和組DAO」は、各人の自主性に任せる性格の強いDAOであるため、どのような人も能動的に学習ができるでしょう。和組DAOでは、和組SBTというトークンを発行しています。
DAOが注目されている背景
DAO自体は2010年代の前半には存在していましたが、とくに2022年になって、さまざまな場面でDAOという言葉が使われるようになりました。なぜ最近になってDAOが注目されるようになったのでしょうか?次に、DAOが知られるようになった背景や理由について、ご紹介します。
NFT・メタバースなどを軸としたブロックチェーンが普及した
2021年に、NFTやメタバースという言葉が盛んに取り上げられました。それらはブロックチェーン技術によって普及したものです。その影響で、それらと関連するDAOが、取り上げられるようになったと考えられます。近年、仮想通貨熱はやがてNFTに移りましたので、さらにDAOが注目をされるでしょう。
誰でも運用できる手軽さがある
DAOの良い点として、「誰でも組織を立ち上げることができること」にあります。DAOを可能にしているデジタル技術そのものはレベルが高いのですが、それを使いこなすための知識はそこまで難しくはないでしょう。何かを達成したいと思えば、誰でも組織を立ち上げることができます。
Web3.0とDAO
ネットの技術の今までの歴史を紐解くと、「Web1.0」から「Web3.0」までの3つの段階に分けることができます。「Web1.0」は、電子メールが主流で、検索エンジンやホームページが始まった頃の段階です。ただ、まだこの段階では、情報提供者と情報取得者は分離しており、一方向の発信でしかなかったのが特徴で、情報取得者は、情報を閲覧することまでしかできませんでした。
「Web2.0」は、GAFAMが台頭してきて、それらが提供するプラットフォームによる双方向のコミュニケーションを実現させました。この段階ではSNSや動画・音楽を主流とした、交流の場が主体であるのが特徴で、現在はこの段階にあるといえます。けれども、プラットフォームの企業が、あまりにも力を持ち過ぎ、そのサービス内容や情報に偏りが出る、などといった問題が起きました。
「Web3.0」とは、Web2.0の仕組みとは異なり、根幹を「ブロックチェーン」とする「分散型ネットワーク」技術です。その技術によって、参加者が分散管理を行い、情報の主権を参加者に置くという、概念による技術です。このWeb3.0の技術を利用したものとして、「仮想通貨」「NFT」「メタバース」「DAO」などのテクノロジーが挙げられます。
DAOのメリット
DAOは新しい技術による、分散型の組織を作り出せるシステムです。それは今までの概念や手法とは異なる面も多いため、DAOが可能なことも増えてくることでしょう。それによって、DAOを行うことで得られるメリットも増えていくことが期待されます。次にDAOを行うことのメリットについて、いくつか紹介します。
中央管理型ではない
DAOは中央管理による組織ではないので、参加者が皆プロジェクトについて、当事者意識をもって提案をし、意見をすることになります。参加者が皆フラットな関係性なので、自ずと平等に意見交換をし、参加者全員が、より納得のできる意思決定を行うことが可能です。
資金調達ができる
DAOでは、ガバナンストークンを発行することによって、資金調達が行われます。そしてそのガバナンストークンは、その組織の意思決定の際に、投票権として用いられるので、将来性のあるDAOであるほど、多くの資金調達が可能となるでしょう。
誰でも参加できる
DAOへの参加は、国籍や個人的な立場などに関係なく、誰でも参加できます。また、DAOに参加をする際には、実名を公表する必要がありません。ですので、組織で行われるプロジェクトは、その構成員の顔や名前を知らなくても行われることが多いでしょう。
そのことから、DAOは参入障壁が高くなく、誰でも構築をする事が可能となるでしょう。これが一般企業であれば、設立に手間がかかりますが、DAOの場合はすぐにメンバーを結成して、仕事やコミュニティを実行することができます。
また、組織への参加も離脱も自由です。そして、今まで会社務めをするなら、副業は禁止と言われた時代が長く続きましたが、今後は1人が複数のDAOに参加するという形態が自然になるでしょう。
DAOのデメリット
現在は「DAOをこれから普及させていく」という段階です。まだそのシステムが成熟しているわけではありません。ですから、次世代の考え方を大きく反映させたものとはいえ、まだその中に、技術的な点や組織のあり方に関して、欠陥や課題が残されていることも事実です。では次に、DAOのデメリットについて紹介します。
ハッキングされるリスクがある
2016年に、イーサリアムのDAOであった「The DAO」がハッキングを受け、そこにあった360万ETH(約52億円)が盗まれた、いわゆる「The DAO事件」が起きました。そもそもThe DAOは、ブロックチェーン上の投資ファンドで、参加者の間で投資ファンドを、選挙を行って選んでいました。そしてファンドの利益が出れば、それを参加者に分配するという仕組みが作られていました。
The DAOのプログラムの欠陥を、ハッカーに見つけられてしまったのが原因だったようです。そしてそのような危険は現在もなくなっているわけではありません。このように、DAOを利用する際はハッキングを受けるリスクがあることも忘れてはいけません。
問題が起きた時の対処に、時間がかかってしまう事がある
DAOは民主的に参加者の意見を吸い取りながら意思決定を行っていく、平和的な組織です。けれども、意思決定をするためには、参加者の意見を聞かなければなりません。そのための時間がかかってしまう、というデメリットがあります。
もし一刻も早く、解決をしなければならない問題が発生してしまったとすれば、その対応は迅速でなければならないでしょう。その点でいえば株式会社の場合は、トップの「鶴の一声」で対処することができますので、それと比較をすれば、DAOはスピーディーさに欠けてしまいます。
また、参加者が多ければ多いほど、意思決定に時間がかかってしまうでしょう。これに関しては大きな課題といえそうです。参加者が多いほど意見が対立し、統一的な見解を発表するまでの時間がかかります。その間に問題がさらに大きくなっていってしまい、対処できないほどに膨らんでいってしまうかのうせいもあるのです。
法的な面での整備が不完全
体制づくりの途中であるDAOですから、それに関する法律が十分に制定されたとはいえません。とくにセキュリティ対策や、消費者保護に関する対策なども、まだまだであるといえるでしょう。現段階では、たとえばハッキング被害を受けたとすれば、その補償は被害額を満額受けられるものではないのです。
また、参加者から集めた資金をまるごと持ち逃げされるような詐欺も、対処法について明確な結論はまだ出ていません。そのように考えれば、まだDAOへの参加は、自己責任であるところが大きいです。もちろん普及にしたがって、DAOに関する犯罪も減っていくとは思われますが、しばらく時間を要するようです。
まとめ
やがて訪れる、次世代のWeb3.0の時代の到来とともに、ブロックチェーンによる交流・仕事などの新しい形態として、DAOが注目され始めています。中央集権の形態では、利益や力が上層部の独占を引き起こす事に対する形で、Web3.0の技術や考え方が徐々に注目されつつあり、今後数年の間に、世界が大きく変わる予感さえさせる発展ぶりです。
その技術には良い面もありますが、発展途上であるがゆえ、問題や課題もあり、それを克服していかなければならなくなるはずです。Web3.0やDAOに、今後も注目する価値は大きいです。新しい技術が広がる世界に、目を向けていくことが重要です。