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【起きた原因と対策をしっかり解説!】半導体不足が建設業界に与える影響とは?

世界中で深刻な半導体不足に陥っていることを、メディアなどで見聞きしたことがあるかもしれません。半導体不足は日本国内でも深刻な影響を及ぼしています。スマホにパソコン、自動車など私たちの日常生活の中でも切っても切り離せません。この半導体不足は、建設業界にも深刻な影響をもたらすと懸念されています。

今回は半導体不足と、建設業界への影響・対策について解説しましょう。

そもそも半導体不足が起きた原因とは?

現在世界中は深刻な半導体不足に陥っています。そもそもなぜここまで半導体の足りない状態が続いているのでしょうか。実はいくつか要因があって、それぞれが複雑に絡み合った結果発生している現象といえます。

そもそも半導体不足とは

半導体不足とは文字通り、世界中で半導体が不足している状態を指します。「半導体ショック」と呼ばれることもある現象です。

半導体不足の状況は、2020年の秋ごろからささやかれ始めました。しかし深刻な問題として顕在化されたのは、2021年ごろといわれています。

半導体が不足すると、半導体を用いた商品やサービスに影響が出てきます。半導体を使った商品のメーカーでは、当初想定していた計画では生産が立ち行かなくなりました。その結果、納期通りの納品ができなくなったわけです。

消費者からすれば、注文した半導体製品が予定通りに納品されない可能性が出てきます。また供給できる商品量が少なくなったことで、需要過多の状態になります。結果的に商品の値上がりを招き、各家庭の財布を直撃したわけです。

米中貿易摩擦

2019年に勃発した米中貿易摩擦が、半導体不足のひとつの要因です。中国からの輸入量が増加して、アメリカの対中貿易赤字の膨張化が当時深刻視されていました。国内製品の売り上げ減少を招いていたので、中国企業に対する輸入規制を実施しました。

規制対象には、中国の大手半導体メーカーも含まれています。その結果、輸入できる半導体の量が規制前と比較して半減してしまいました。

アメリカもこの状況に手をこまねいていたわけではありません。半減した穴埋めとして、台湾企業に発注しました。しかしこの発注量が、台湾メーカーの生産能力を大きく超えるものでした。結果的に生産が追い付かず、半導体不足になったわけです。

台湾で干ばつが発生

台湾は世界の半導体シェア21.4%でトップシェアを誇ります。ところが2021年に雨不足の状態に陥りました。結果的に56年ぶりとなる干ばつに見舞われています。

半導体は製造する中で大量の水が必要です。TMSCという世界トップクラスの半導体専業メーカーがあります。ここのファクトリーだけでも、1日15万6,000トンもの水を使用するといわれています。慢性的な水不足で半導体の生産が滞り、世界的な半導体不足の状況を引き起こしました。

新型コロナウイルスの流行

2020年から発生した新型コロナウイルスの世界的な流行は、記憶に新しいところです。日本だけでなく世界中で外出の自粛やロックダウンなどで、自宅での生活を強いられました。その結果パソコンを始め、半導体を使用する家電の需要が急速に高まっていきました。

一方肝心の半導体を輸出したくても、コロナの影響で港にとどめ置かれる状況でスムーズな輸出が難しくなります。このような半導体流通チャンネルが機能しなかったことも、深刻な半導体不足を招いたと考えられています。

また新型コロナウイルスが流行する前に、半導体メーカーが増産しなかったことも影響しているようです。新型コロナの流行直前の2019年には、世界的な半導体のマーケット規模は縮小しつつありました。需要回復が見込めなかったこともあり、増産ができませんでした。

ところがコロナの流行によって、おこもり需要が増すという想定外の事態が起こったのです。とくにパソコンやテレビ、自動車に搭載する半導体の需要が急激に伸びました。

外出自粛で、日本国内外でテレワークが急速に普及しました。それに伴いパソコンの需要が高まったのです。パソコンの半導体は、PMICと呼ばれるものです。このPMICは、半導体の中でも元々需要が高止まりで推移していました。

ちょうどこの時期、5Gが普及していくタイミングでした。そこで5Gに対応したスマホが続々生産され、需要が高まっていたのです。そこにきてパソコンの需要も増大したので、慢性的な品薄状況が生まれました。

またテレビで用いられるDDICという半導体不足も起こりました。在宅時間が増えたことでテレビを買い替えたいというお客さんが増えたためです。さらに自動車のMCUという半導体不足も起こりました。三密を避けるために電車やバスの利用を控え、マイカーで移動する人が増えたからです。

このように新型コロナで需要が急激に増大しました。その反面、半導体業界では生産量を抑える施策が採用されていました。この業界の方針が、結果的に品薄状態を助長させたところもあります。

生産体制の老朽化

コロナ禍で需要が急激に高まったPMICやDDIC、MCUなどの半導体は、8インチウエハー工場で生産されています。半導体の世界では一世代前の工場です。実は世界中の8インチウエハー工場で老朽化が進んでいます。

このため半導体メーカーはファウンドリーと呼ばれる、受託生産しているメーカーから製造委託する形をとっていました。ファウンドリーは、そこまで高い生産能力を有しているわけではありません。受注が増大しても生産能力が追い付かず、結果的に半導体不足を招いた側面もありました。

ロシアのウクライナ侵攻

2022年、ロシアがウクライナに侵攻しました。皆さんもニュースなどで目にする機会があったでしょう。こちらも間接的に半導体不足を深刻させた要因のひとつです。

半導体の製造に欠かせない希ガスや希少金属は、ウクライナとロシアが主な供給先でした。この両者が戦闘を始めたことで、サプライチェーンが機能不全に陥ったわけです。たとえば半導体製造に必要な希ガスのひとつにネオンガスがあります。ネオンガスはウクライナが主要な産出国です。世界の需要の実に7割をウクライナが担っているといわれているほどです。

2023年現在、ロシアとウクライナの戦闘状況は一進一退の状況が続いているとみられています。戦闘が長期化する恐れもあると指摘されています。停戦がなされないと原材料の供給が円滑に進まない恐れも出てきているのです。

半導体需要が多様化した

半導体の需要ですが、現在過渡期の状況となっています。既存のものだけでなく、新しい需要が発生しつつある状況も半導体不足の一員です。たとえば地球環境の保護のため、地球温暖化を招く二酸化炭素の排出量を抑制する方策が進められています。その一環として、脱炭素社会の実現があげられます。

脱炭素化社会の実現のために開発が進められているものとして、電気自動車やハイブリッドカーもあり、いずれも半導体が必要です。しかも従来のガソリンエンジンの自動車と比較して、数倍の半導体が必要といわれています。

また近年顕著なのが、グラフィックボードの需要拡大です。グラフィックボードとは、パソコンのパーツの一種です。動画編集や仮想通貨のマイニングなどで必要なアイテムといわれています。また建設業界でも、3DCADソフトを使うために必要なアイテムです。

マイニング需要の増大

先ほど紹介したグラフィックボードの活用目的のひとつに、マイニングがありました。実は世界的にマイニング需要が拡大した結果、半導体不足を招いた側面もあります。仮想通貨が高騰しているので、マイニングによって新しい通貨を獲得しようという動きが、世界中でみられています。

マイニングするためにはグラフィックボードはじめ、専用のパソコンパーツが必要です。その中にはマイニングに特化した半導体も含まれます。結果的に半導体不足を招いた一因とみられるわけです。

建設業界に半導体不足が与える影響とは?

世界的な半導体不足の状況は、各業界に深刻な影響をもたらしているといわれています。自動車やパソコン・スマホなどのIT業界、各種家電製品などさまざまです。実は影響を受けている業界のひとつに建設業界も含まれます。なぜ建設業にとって半導体不足が問題なのか、以下で詳しくみていきましょう。

住宅設備の設置ができない

建物を建設するにあたって、住宅に欠かせない設備を設置する工程があります。具体的にはエアコンや温水洗浄便座、給湯器・床暖房などに半導体が使われています。半導体不足の状況が続けば、設備そのものがなかなか納入されない恐れも出てくるわけです。

その結果、建物の建設計画が立てられません。マイホームの建設も当初の計画通りに進まず、なかなか自分の持ち家での生活がスタートできなくなることも懸念されます。

キャッシュフローの悪化

建設業者は竣工して初めて代金を受け取る仕組みです。設備が届かないことで竣工不能な状況が続けば、お金が入ってきません。

一方半導体不足で需要過多になれば、どうしても価格は上昇します。原材料上昇によって、設備が当初の価格では納入できない恐れも出てきます。製品が仕入れ可能な状態になってもコスト上昇で、支出が増え利益圧迫の恐れも出てくるわけです。

値上げ分を建物の価格に反映できればまだよいでしょう。しかし事前に価格など決めてしまって契約書も交わしている状況だと、たとえ製品が値上がりしても価格を変更するのは厳しくなります。このようにキャッシュ不労が悪化して、資金繰りが厳しくなる工務店やハウスメーカーも続出するかもしれません。

半導体不足の状況が改善される時期は?

半導体不足の状況を改善すべく、世界中でさまざまな対策が試みられています。半導体メーカーの中には生産ラインを強化し、供給能力をアップしたところも少なくありません。

また日本でも国をあげて、台湾の半導体メーカーの工場を誘致する計画も進められています。このため、近い将来半導体不足の状況は改善されるとみられています。

2023年の後半ごろまでには、状況が好転するという声も少なくありません。ただし2021年に半導体不足がささやかれ始めたころには、2022年の第2四半期ごろまでには緩和されると考えられていました。しかし2023年後半にまで、緩和時期がずれ込んでいます。

ロシアによるウクライナ侵攻など、不確定要素もいくつかあります。そう考えると、2023年後半までに本当に半導体不足の状況が改善されるかどうかは、不透明な状況といわざるをえません。

建設業界が半導体不足を乗り切るには?

半導体不足は当面続くというのが、一般的な見方です。建設業界も今までの営業スタイルのままだとキャッシュフローが悪化し、経営状況が厳しくなるでしょう。そのような状況の中で生き残るためには、今までになかった方策を講じることが重要です。

発注を早めに行う

半導体不足の状況では、希望する製品が届くまでに時間がかかります。当初の予定通りに建築計画を進めたければ、早めの発注を心がけましょう。半導体不足の2023年時点で、製品の納期は1~2か月ほど遅延しているといわれています。そこでいつもよりも1~2か月早めに発注手続きを済ませれば、遅延の影響を最小限に抑えられるわけです。

また納期が当初よりも後れをとるのであれば、そのほかの部分を優先的に進めるのも有効な対策のひとつです。これまでのやり方に固執するのではなく、工程をフレキシブルに組み替えられるような体制づくりを進めることも対策になりえます。

住宅事業以外に進出する

半導体不足により住宅事業や住宅設備事業が停滞しているのであれば、ほかの事業で利益を出してリカバリーするのも、有効な対策のひとつです。事業の多角化で成功すれば、リスク分散が可能です。今後事業のどれかで損失を出しても、ほかの事業が順調であれば損失の穴埋めができます。安定した事業を今後も続けていくためにも、ほかの事業を開拓してみるとよいでしょう。

ただし現在手掛けている事業とまったく関係ない事業を立ち上げても、うまくいかない可能性は大でしょう。新規事業に関するノウハウがまったくないからです。建設業に関連する分野の中で、新規事業を検討したほうが軌道に乗りやすいでしょう。

たとえば半導体不足が起きてから、工場をはじめとした施設の改修事業を新規に立ち上げた企業がありました。リフォーム事業などは需要が高いので、軌道に乗る可能性も期待できます。確実に新規事業を軌道に乗せるためにも、利益を出せそうな分野はないか検討しましょう。さらに自分たちの持っているノウハウの生かせそうな事業がないか、じっくりと検討してください。

別事業を推し進めるにあたって、住宅事業との両立ができるかも考えておくべきです。今は半導体不足で住宅事業が停滞していても、いずれ半導体の供給問題は解決されるでしょう。半導体の供給が問題発生前にまで回復すれば、住宅事業は再び忙しくなるでしょう。

住宅事業が多忙で、新規事業に手が付けられなければ元も子もありません。住宅事業の業績が回復した場合でも両立できるか、それだけの人的リソースを確保できているかは、十分検討する必要があります。

ITツールの導入

もし今までITツールの導入など、デジタル化を推進してこなかったのであれば、今のうちにデジタル化を進めておくことも大切です。とくに積算見積ソフトを導入することは、今後の建設業界では必要な施策といえます。

というのも半導体不足が解消されると、今度は供給過多の状況に陥るのではないかとみられているからです。半導体不足の解消のために、現在各メーカーが生産力の増強に努めています。供給力が高まったことで、現在の半導体不足の反動が来るのではないかと考えられるためです。

現在は半導体不足の状況のため業者同士で、半導体製品の奪い合いが起きています。その結果、価格が次第に上昇している状況です。それが今後供給過多の状況に陥ると、半導体製品の価格が値崩れを起こす恐れも出てきます。

このように建設設備の大幅な価格変動が起こり、不安定な状況が当面続くかもしれません。そのような価格変動に柔軟に対応して、その時々の市場動向の反映された価格をお客さんに提案する必要があります。そのためには積算見積ソフトの導入が欠かせません。

建設業界に対応した積算見積ツールを導入すれば、拾い出しや積算見積も迅速かつ正確に行えます。お客さんも納得の価格で、工事を依頼できるわけです。

まとめ

半導体不足は2021年から顕在化し、2023年時点でも完全に回復したとはいえない状況です。住宅設備の中には半導体を用いた製品も少なくないので、建設業界にも深刻な影響が出てきています。設備の納入遅れによって、建設作業に遅れが生じるといった事態も起こっています。

建物の引き渡しがままならないと、代金を受け取れません。その結果、キャッシュフローが悪化して経営状態に深刻なダメージを被っている業者もいるでしょう。半導体不足の厳しい状況を克服するためには早めに発注を出す、別の資金事業で収益を生み出すなどの対策が必要です。もし経営状況が厳しければ、今回紹介した方策を実際に進めてみるとよいでしょう。

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