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EVシフトの現状とは?電気自動車の現状と将来性、今後の課題を徹底解説

「100年に一度のエネルギー変革」と呼ばれ、「ガソリン車の新車販売禁止」など、世界的に「EVシフト」への関心が高まっているのはご存知でしょうか。しかし日本において、EVの普及を実感する人は少ないかもしれません。

日本におけるEVシフトの現状は、世界におけるEVシフトとどのように違うのでしょうか。また、電気自動車の現状や将来性、今後の課題などを徹底的に解説していきましょう。

「EVシフト」とは?なぜ世界的に推進されているのか?

まずは、EVシフトについての基礎から解説していきます。なぜEVシフトは世界的に進められているのでしょうか。

EVシフトとは?

日本における車市場は、1970年代以降のモータリゼーション(日常生活に自動車利用の普及すること)の進展によって、高度成長を続けています。そしてバブル絶頂期の1990年代には、新車登録台数も約777万台を突破し、自動車市場も頂点に達したことはご存知の通りでしょう。その後バブル崩壊とともに自動車市場も成長は鈍化し、近年では「若者の車離れ」などもクローズアップされています。

それでも車の走りそのものに魅力を感じる層は存在するほか、地方では「足」として自動車はまだまだ一人一台のレベルで必要とされているのが現状でしょう。そこへ参入したのが、「次世代自動車」と称されるハイブリッドカーや電気自動車、燃料電池車や天然ガス自動車です。

「EV(Electric Vehicle)」とは、エンジンを動力とせず、モーターで走行する「電気自動車」を指します。そして、従来までのガソリンなど化学燃料を使って走行する自動車からEVへと転換させていこうとする動き、「EVシフト」はご存知でしょうか。現在、日本のみならず世界的な動向として、EVシフトが推進されています。

EVシフトが推進される理由とは?

なぜ世界的にEVシフトが推進されているのでしょうか。それには、まず地球温暖化の抑制が挙げられます。2015年に開催されたCOP21で採択された「パリ協定」では、世界の平均気温上昇について産業革命以前より2℃以上低く保ち、1.5℃に抑えようという努力目標(1.5℃目標)が約束されました。

その目標達成のため、二酸化炭素といった温室効果ガスの排出を減らすことが各国に求められているのです。そこで日本でも、2050年までに温室効果ガス排出を全体としてゼロにするという「カーボンニュートラル」宣言が行われました。

ガソリンをエンジン燃料として消費した場合、二酸化炭素・窒素化合物といった温室効果ガスとなり、環境破壊につながってしまうことは確かでしょう。そのため、二酸化炭素の排出のないEVへの移行が国として推進されているというわけなのです。

日本におけるEVシフトの取り組みは?日本におけるEVの普及率を調査

日本におけるEVシフトの具体的な取り組みと、日本におけるEVの普及率について見ていきましょう。

日本におけるEVシフトの取り組みは?

日本においては、「2035年までに、乗用車の新車販売において電動車の割合100%を実現」することが方針として定められているのはご存知でしょうか。ただしこの「電動車」とは、EVやPHEVのみならずFCVやHEVも含まれての100%となります。100%EVにするというわけではないのです。

なお、「HEV」とは電気とガソリンなどの化学燃料の両方がエネルギー源の車なのはご存知でしょうか。エンジンの発電したエネルギーを利用してモーターが動くため、外部電力は必要ありません。「PHEV」はHEV同様にエンジンとモーター2つの動力が備わっていて、さらに外部電源も使用できる車です。「FCV」は、酸素と水素を化学反応させ水素発電でモーターを駆動する車です。EV・HEV・PHEV・FCVはすべて、広い意味で電力を使用する車だと言えるでしょう。

経済産業省が策定した「グリーン成長戦略」の中で、インフラの整備にも言及しています。「2030年までに急速充電器3万基を設置する」と明言しているのです。これは現在の約4倍に当たる数ではあるものの、税制優遇や研究分野への支援、そして国際連携などにも触れるなど具体的な戦略として打ち出していると言えるでしょう。

さらに、2022年には、「新しい資本主義のグランドデザインおよび実行計画」が発表されました。この中で「重点投資分野」の一つとして、化学エネルギー中心の産業・社会構造を、クリーンエネルギー中心の産業・社会構造へと転換させようとする取り組みが位置づけられました。これが「GX(グリーントランスフォーメーション)」です。2023年には、「GX推進法」も国会で成立し、150兆円規模の投資が今後10年間で行われることを目指しています。このことでEVシフトはさらに後押しされることが見込まれるでしょう。

また、都道府県など自治体においても、EVシフトの取り組みが数多く行われているのはご存知でしょうか。たとえば東京都では、2050年の脱炭素社会を実現させるため、排出される二酸化炭素実質ゼロを目指す「ZEV普及プログラム」を提唱しています。ZEVとは、EVやFCV、PHEVなど二酸化炭素を排出しない車の総称です。EVへの補助金や充電インフラへの支援などの具体策で、EVの普及推進を表明しました。

日本におけるEVの普及率は?

日本におけるEVの普及率は、実は公表されていません。そこで、一般社団法人「日本自動車販売協会連合会」発表の「燃料別販売台数」を見ていきましょう。2020年におけるEV(軽自動車は除外)の新車販売台数は、約1万5,000台、2021年は約2万1,000台でした。そして2022年の約3万1,600台という結果となり、伸長率は150%の大躍進だと言えます。なお、普通乗用車の販売台数は約222万台だったため、EVは全体の約1.42%でした。

ただしこの販売台数は、軽自動車を含みません。2022年には日産より軽EV「サクラ」、三菱より「ekクロスEV」が登場して、話題を集めたのはご存知でしょう。2022年の軽EV販売台数は2万7,645台を記録しており、普通乗用車EVに迫る勢いで売れているのです。普通・軽自動車を合わせたEVの販売台数は、2022年において5万9,237台であり、前年の約2.7倍と急上昇だと言えるでしょう。

2023年の動向も見ていきましょう。2023年上半期のEV販売台数は2万2,857台を突破し、総販売台数の1.6%を記録しています。軽EV販売台数を含めれば、4万8,664台となり、EVの割合は2.38%となりました。確実に販売台数・総販売台数に占める割合を伸ばしていますが、まだまだ数%台と低水準が続いていると言えるでしょう。

世界におけるEVシフトの取り組みは?世界におけるEVの普及率を調査

次は、世界各国におけるEVシフトの具体的な取り組みと、EVの普及率について見ていきましょう。

世界におけるEVシフトの取り組みは?

まずは、アメリカにおけるEVシフトの取り組みを見ていきましょう。アメリカでは、2021年にバイデン大統領が「アメリカ国内で販売する新車のうち50%以上を2030年までに電動化する」旨の大統領令に署名しました。それに伴って政策が進められると同時に、フォードやGM(ゼネラルモーターズ)といった自動車メーカーも、電動化推進を加速させると声明を出しています。

この時の「電動化車両」は、EV・FCV・PHEVが含まれるものの、HEVは含まれません。また、2022年成立の「インフレ抑制法」に盛り込まれた最大7,500ドルにも及ぶEVとPHEVの税額控除優遇策が、大きな混乱を招いているのはご存知でしょうか。税控除対象になるには、バッテリーの材料や部品の調達先を、北米またはアメリカとFTA(自由貿易協定)を締結している国に、限定したためです。今後の動向も、大いに注目されることでしょう。

次に、ヨーロッパにおけるEVシフトについて見ていきましょう。ヨーロッパでは、EC(欧州委員会)から発表された「欧州グリーンディール」の中で、自動車分野についての非常に高い目標が設定されています。二酸化炭素排出量について、2030年までに55%削減(2021年比で)、2035年までに100%削減(2021年比で)と設定したのです。つまり2035年には、すべてのガソリン車やディーゼル車、HEVやPHEVまでが禁止されることを意味するでしょう。ただしドイツからは、2035年以降も合成燃料を使った内燃機関の利用が例外的に認められています。

それでは中国におけるEVシフトはどうでしょうか。中国では2017年、「NEV規制」が発表されました。これは中国国内で新車を製造・輸入する業者に対し、2019年4月からNEV(新エネルギー車)の供給を一定数の割合で義務付けるものです。

この割合は、19年は10%、20年には12%となっています。そして2035年までに、NEVの割合を50%以上とし、そのうちEVを95%とする目標を掲げているのです。さらに、NEV取得の際の税減免政策も、当初2023年末終了だったものの2027年末に延長することが決定しました。中国では今後も、購入時の優遇策を通してEVシフトを推進していくのでしょう。

その他の国はどうでしょうか。イギリスでは、「グリーン産業革命」が2020年に発表され2050年までに温暖化ガスの排出をゼロにするという目標が発表されました。ガソリン車やディーゼル車の禁止についていち早く政策を打ち出したインドでは、「2030年までに完全EV化」を表明しました。ところが思うように政策が進まず撤回され、2030年までに新車として販売された車のうち、EVの割合を3割にするという目標に修正されています。

世界におけるEVの普及率は?

日本においてはまだまだ低水準の続くEV普及率ですが、海外ではどうでしょうか。積極的にEVシフトを推進するヨーロッパの、2020年の新車登録台数におけるEV比率は、5.6%と日本より高水準でした。とくにEVシフトを急速に推進するノルウェーでは、2020年のEV比率が何と約54%を突破し、世界一の普及率を収めているのです。

アメリカでは、2020年のEV普及率約1.8%と、現状ではそれほど普及が進んでいるとはいいがたい結果でしょう。ただしバイデン政権はEVシフトに積極姿勢なため、今後急速に普及率を伸ばすこともあり得ます。中国のEV普及率は2020年に約4.4%と、着実に成果を上げているところだと見られるでしょう。

EVの将来性や課題は?EVの今後を予想!

ここからはEVの今後について、将来性や課題などを見ていきましょう。

日本のEV目標や今後の取り組みは?

2021年に当時の菅総理大臣が、電動車の新車の販売100%を2035年までに実現すると施政方針演説で宣言しました。この目標における電動車は、EVのみならずHV・FCV・PHVなども含みます。世界的にEVシフトの進められる流れの中で、日本も明確にその方針を打ち出し、国内のEVシフトはこれまで以上に推進していくと考えられるでしょう。

この流れを受けて、各自動車メーカーもEVシフトへの方向転換を表明しました。トヨタがこれまで「2030年までにEV・FCV合わせた世界販売台数200万台」と掲げてきた目標を、「2030年までにEVのみで世界販売台数350万台」へと大きく引き上げたのはご存知でしょうか。電動化投資8兆円のうち、車載電池開発などEVに対して4兆円を当てることも発表しています。他の自動車メーカーもEVシフトに対する方針を発表しており、今後EV普及は急速に進む可能性も大いにあり得るでしょう。

EVの今後の展望とは?

EVは今後、価格や使い方、機能などがすべて大きく変化するだろうと考えられています。まずは「価格」についてです。EVの普及が進まない理由として、価格の高さが挙げられるでしょう。バッテリーが非常に高価であり、材料費も高騰しているので価格がどうしても高くなってしまうのがネックなのです。

さらにガソリン車の利益率は約20%なのに対し、EVはわずか5%程度であり、価格が下がりにくいのは当然だと言えます。しかしEVの普及に伴い、大量生産することによって材料費が抑えられ、価格は下がっていくことが考えられるでしょう。各メーカーの価格競争や円相場の安定なども、追い風となって車体価格は徐々に下がっていくと見込まれているのです。

また、価格の大幅な値下げにはまだしばらく時間の掛かるものの、それまでの間に政府や自治体による補助金・減税政策が実施され、購入価格を抑える施策が取られるでしょう。現在すでに「エコカー減税」や「CEV補助金」が導入されています。車検時に掛かる重量税についても、EVは全額免除されており、自動車税も75%軽減されるなど維持費も抑えられる仕組みづくりが整っているのです。

EVの使われ方も、大きく変わっていくでしょう。現時点では国内で1%程度の普及率であるものの、今後約40%にまで増えることが予想されています。その中でEVは、自動車としてのみならず蓄電池としての使われ方もメジャーになってくると予想されているのです。大きな災害の続いている日本では、大きな安心材料となるでしょう。

今後さまざまな車種のEVが販売されるようになれば、短距離使用の普段使い用、運送などの長距離運転用などと、用途に合った電気自動車を選べる時代も遠くありません。さらに自動運転などの新機能がプラスされることで、ユーザーの選択肢はより増えることになるでしょう。

今後はEV開発への異業種参入がさらに活発化し、これまでの自動車になかった新機能が搭載されるようになるはずです。車同士がインターネットで常時接続していて、災害や渋滞などの情報を共有したり、高品質の音響設備や映像投影で音楽空間として車内を演出したりすることが可能になっていくでしょう。

通信・ネットワーク技術の進化とともに、エンターテイメント分野も融合させ新技術が搭載されたEV誕生もそう遠くはないかもしれません。より高度な自動運転を実現するのに当たって、シンプルな構造だったEVもカメラやセンサーをより多く搭載させる必要性も出てくるでしょう。新機能がEVに続々搭載されることで、市場も活性化しカーライフも大きく転換していくことが予想されます。

EVシフトの今後の課題とは?

世界各国でEVシフトの推進が強化されているものの、今後の課題も存在します。走行中に二酸化炭素を排出しないEVではあるものの、発電時の二酸化炭素の排出量も減らしていくことが今後は課題となるでしょう。EVシフトは、再生可能エネルギーを発電時に導入するなど、発電所での脱炭素と合わせて動いていく必要があるのです。

また、車種が少なく消費者にとって選択肢の少ない点も課題でしょう。選択肢がほとんどないためガソリン車を購入する消費者が多く、販売価格がなかなか下がらないという悪循環が生まれ、なかなかEV普及を遅らせる一因となっているのです。

さらに、急速充電設備の増設も急務です。日本に現在設置されている急速充電設備は8,000基ほどでまだまだ十分とは言えません。政府は2030年までに3万基までに増設する目標を掲げており、実現が急務でしょう。

EVシフトの課題としては、日本産業や日本経済への影響も無視できません。自動車産業は日本における主要産業であり、EVシフト推進によってガソリン車の部品生産を担っていた中小企業へのダメージは避けられないでしょう。このようなダメージとバランスを取りながら、EVシフトを推進していく必要があります。

まとめ

現在EV普及率は決して高いとは言えないものの、EVシフトを強く推進していく各国の潮流は大きいものがあり、脱炭素社会を目指す日本においてもEVシフトの加速は確実でしょう。災害に備えた蓄電池の役割を果たすEVは、革新的な機能を搭載するなど車種の選択肢が増えること、車体価格の下がることで消費者にとって購入しやすい・購入したい車になるはずです。

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